「途上国の現場のNGOの仕事、楽しいですか?」問題に自分なりの答えを出す
前回「途上国の現場のNGOの仕事は楽しいですか?」と聞かれて正直に楽しいと言えない自分がいることを吐き出し、なぜそうなってしまったのかについて考えた。
途上国の現場のNGOで働いている方とメッセージをしたり、その人たちのブログを読んで出てきた答えを端的に記すと、
「This is an NGO job!」
それがNGOの仕事でしょ、と。
汚職や非効率なプロセスのどろどろ、しがらみ。
未発達な運営体制やスタッフのキャパや人員採用・配置などの人事における課題。
程度の差はあれどどこの日系NGOの中でもあるようだ。
資金的に厳しいNGOが多く、限られた人員しか送り込むことができず、一人一人が多くのタスクをこなさなければいけない状況になっている。
自分だけではなくて、NGOの現場での仕事の性格はそういうもので、他でも似た状況だと思えると、目の前の課題が客観化され、少し気が楽になる。
楽しいと思えない4つのポイントに応答する
前回のブログでは4つのポイントをあげてみた。
①成果が見えない
②同僚のやる気がない
③成長した感覚がない
④仕事量が多くプライベートの時間がない
この1つ1つのポイントに自分なりの応答をしてみようと思う。
①の成果が見えないことに関しては、ボトムアップ型のプロジェクトは、時間と忍耐が必要だと思った。去年は選挙や組織のがたがたがあり、ローカルスタッフとも地域の関係者との関係作りでもすごく時間が過ぎてしまった。まだ成果が見えるのはこれからだ。
もちろんプロジェクトの成果は志向していきたいが、日々の小さな成功にも目を向けていけるようになれればなと感じた。
②の同僚のやる気がない問題については、プロジェクトの直接の成果ではないけど、彼らのメンタリティーを変えることも一つの成果と位置付けてやってみる。
③の成長した感覚がない問題については、分析やアカデミック的な部分でのレベルアップにこだわりすぎていたように思う。本来伸ばしたいと思っていた分野ではないのかもしれないけれど、対人関係の作り方や情報収集能力など自分が気づかなかった部分で成長はしているのかもしれないと思った。そういった部分にも目を向けていく。
また自分で伸ばしたいと思っている分析能力に関しては、NGOの事業運営をしながら伸ばしていくのは本当にすごく難しい。一方で本当にその分野のレベルアップを図りたい場合は、常に仕事の中で意識しておかないとずっとできずじまいになってしまう。
凸凹道で片道3時間かかるモニタリングの後でも、雑務の中でも効率性を考え、自分でその時間を確保してレベルアップのための努力をし続けることが大事だと思った。
何度も自分の前回のブログを読み直してみたが、課題ばかりに目がいきがちだった。思考がネガティブになっている。
NGOの現場の仕事は泥臭く忍耐が必要で、その中でも前を向いていかなければいけないことは頭では分かっている。情熱の火は常に灯しておきたいとも思う。
でも現場の狭い環境にいると徐々にそういうメンタリティーになってきてしまうものでだ。一時帰国で美味しいものを食べ、好きな人との時間を過ごして満たされて途上国の現場に戻ってきたときは、常に前向きに考えられていたのだ。
常に前向きに考えられるような人であれば、問題ないかもしれない。
でもみんながそういう人ばかりじゃない。前向きになるときもあれば、落ち込むこともある。
常にポジティブで周りにもプラスの影響力を与えられる人でいたい、ブログでもポジティブなことを書きたい、でもそうやって本来の自分を隠して気丈に振る舞うのは疲れる。前を向いて仕事をしていきたい、でもまずはネガティブになってしまう自分自身を認めてあげる、そしてネガティブに考えてしまう状態をとりあえず肯定すること、それがネガティブスパイラルから抜け出す第一歩と考える。
ネガティブスパイラルに陥らず、自分の心の状態を保つためには休息が必要だ。
国際協力の大先輩の中には、四六時中国際協力のことを考え、ワークホリック気味の人はいっぱいいる。彼女たちの情熱とコミットメントには尊敬する一方で、自分は自身の精神的充足がないと、国際協力への情熱の火を灯し続けることはできない。
④の仕事量が多く、プライベートの時間がない状態だと、精神衛生上良くない。途上国のド田舎で、土日なく毎日働くことを長期間続けていると気持ちが滅入ってしまうのは当然だろう。メンタリティーを維持していくためにはプライベートの時間の充足が必要だ。
仕事が楽しいと少しでも感じられるように目標を立ててみる
社会人が「仕事が楽しい」と感じる瞬間のときに、「目標を達成したとき」があるようだ。
もちろん究極的な目標はプロジェクトの成果をあげることなのだが、以上の4つのポイントへの応答を参考にし、ざっくりとはしているが自分なりに達成感を味わうことができそうな目標を立ててみようと思う。
1.同僚のメンタリティーを変える
現在専門家や日本人任せになっている彼らのメンタリティーを変え、自分たちがプロジェクトに主体性を持って関わるんだと思うように仕向けていきたい。それを自分自身の成果と位置付ける。
2.今やっている仕事をローカルスタッフができるようにする
日本への日本語での報告を除き、現在自分がやっている統計分析やコミュニティ会議の戦略、IT系の仕事などをローカルスタッフでもできるように能力強化する。そういったことが同僚のメンタリティーを変えることにも繋がっていくと思う。
3.自分のタスクを効率的に処理し、分析の時間・休暇の時間を取れるようにする
雑務が多いし、スタッフの能力強化も時間がかかるだろう。しかし、事前にタスクを計画し、うまくマネージすることで、仕事中でも教育データを使って分析する時間を設ける。また私的空間の充足がメンタリティーの維持のためにも必要なことから、仕事を終えれば残業せずぱっと帰宅し、休暇を取り趣味の旅行にでかける時間も設けていきたい。
まとめ
課題だらけのNGOの現場、それがNGOの現場の仕事だ。その中で自分なりの目標ややりがいを見つけていくことが楽しみに繋がっていくと信じ、まずは行動してみる。
一方で自分を酷使しすぎない。プライベートの時間や休暇を十分に取り、精神的に充たしておく。
課題だらけのNGOの現場では、現状としては現場にいる人たちがもがいていくしかないのであろう。一方で長期的には組織やNGO業界全体が変わっていく必要もある。
この点に関してはまた日を改めて書くこととしたい。