国際協力NGOの現場で働きたい。職務経験を積むために一般企業に新卒就職すべき?
国際協力の道を志した大学時代。
まずは受益者との距離が近い国際協力の現場で働きたいなと考えた。
開発の現場にどっぷりと入り込めるのはNGOだと思いNGOへの就職の方法を模索した。
しかしネットから得られる情報は思いのほか大変そうだった。
私の頭を多いに悩ましたのが
国際協力分野の求人情報サイトに載っている「修士号」と「職務経験○年」の文字。
さらに「途上国での実務経験」という要件があることもあった。
一般企業に就職し、途上国赴任の機会を伺う。
数年途上国でのビジネスを経験し、それから修士号を取ってやっと応募条件を満たせる。
就職してすぐ途上国に送ってくれるそんな仕事って簡単に見つかるんだろうかと途方にくれた。
- 新卒就職すべきか
- 直接大学院に進学するべきか
- 途上国の援助の現場にとりあえず飛び込むべきか
大学4年時に大いに悩んだのを覚えている。
私は結局大学卒業後、英国の大学院に進学し、ミャンマーのNGOでのインターンを経験。
そのまま同じミャンマーのNGOに入職、その後ケニアのNGOに転職して現在に至る。
ネットでは様々な情報が流れており、まずはとりあえず新卒就職して職務経験だよ!という記事をたくさん見かける。
NGOへ就職することのみを考えるのであれば合っているのかもしれないが、目的やタイミングによってはベストな選択ではないかもしれない。
途上国の開発に貢献したいという高い志を持っている学生さんが適切な進路選択ができるように国際協力NGOの現場で働くための考える軸を紹介したいと思います。
主に学生さん向けに書いていますが、国際協力分野への転職を考えられている方にも参考になる部分があるかと思います。
1. 今後あなたは国際協力分野で何として働きたい?
まず自問自答してほしい。
あなたは国際協力のスペシャリストになりたいのか、それともジェネラリストになりたいのか。
スペシャリストになりたいのであれば、どの分野のスペシャリストになりたいのか。
スペシャリストは教育や保健、農業などの専門的知識を生かして、国際協力事業の課題の解決や研究に貢献する人材。
ジェネラリストは事業が円滑に回るために、会計や調達、調整業務に携わる人材。
もちろん現場に入るとスペシャリストがジェネラリスト的な仕事をしたり、逆のパターンもありうるので、ばっさりと二項対立的にスペシャリストvsジェネラリストと分けることは難しい。
しかし、ざっくりとスペシャリストになりたいのか、ジェネラリストになりたいのか考えておくことは重要だ。
後者の場合、マネジメントや会計の知識が必要なので、一般企業に就職していわゆるビジネススキルを獲得するのは必要かもしれない。
前者の場合、必要になるのは分野の専門性の獲得と、途上国の現場の文脈の理解であろう。
私の場合、途上国の教育のスペシャリストになりたい、将来的には博士課程に進みたいという思いがあったため、
- 修士号の獲得
- 途上国の教育に関する仕事をする
- 早く現場に入って文脈を理解する
ことが進路選択の際のプライオリティであった。
そのため新卒採用で企業で経験を積む必要性を強く感じなかった。
ところで今後スペシャリストとして国連などの就職を考えている場合は、
一般企業でのジェネラルな経験が長いとCV上意味を持ちえない可能性がある。
教育のスペシャリストになりたいのであれば、教師の経験はプラスになるだろうが、
一般企業で貿易に携わっていても、CV上あまり意味を持たない。
CVが求めるポジションの分野と自分の経歴が一貫している必要がある。
国際機関で働くためのキャリアも日本人はジェネラリストが多過ぎるし、学歴と職歴のミスマッチも多い。私の分野だと一般企業で勤務後留学して職歴と大学院で学んだ内容が合わない人がいるけど、途上国の子供分野で働いた→国際教育開発で修士号と取りましたって候補者にどうやっても太刀打ちできない。
— 畠山勝太/サルタック (@ShotaHatakeyama) 2016年6月26日
2.修士号を取るタイミング
最近はNGOの採用の条件も上がっているように感じる。
たとえジェネラリストの仕事であっても修士号が応募要件に入っていたり、
応募要件に入っていなくても職場の人間は修士号をみんな持っていることもある。
私は学部から直接修士号に進んだ。
メリットは出願のための時間が比較的あることだ。
社会人になってから出願した人の話を聞くと、仕事をしながら、学校を探したり、海外の場合は英語の勉強をしたりと苦労したと聞いた。
その点、学生時代であれば社会人よりも時間があるので、準備にかかる時間は確保しやすい。
また人に寄ると思うが、学部を卒業して何年か学問から離れていると、修士の授業にキャッチアップするのが難しくなる。
どさっと出るリーディングの課題に対応していくにはかなり根気と集中力のいるプロセスだ。
学部時代にしっかり勉強する習慣をつけていれば、修士に進学してもなんとかやっていける。
デメリットは下記で触れるお金。
3.実際かかる費用と機会費用
と、理想的なことを言っても考えなければいけない点は「お金」。
学部時代に学資ローンを組んでいたら返済のために働かなくてはいけないし、
修士号だってお金がかかる。
ましてや海外の大学院に進学するにはかなりのお金がかかる。
(私は運よく奨学金を獲得することができた)
直接かかる費用に比べてもう一つ考えなくてはいけないのが、機会費用だ。
機会費用は他の選択を取っていたら得られたであろう最大の利益のことを言う。
年を重ねれば重ねるほど、企業で就職していたら得られる収入もあがるだろうし、結婚など様々なことを考え始める時期になる。
そういった中で収入が消え、逆に負債を抱える修士号の進学や給料ががた落ちするNGOの就職はかなり勇気がある決断と言える。
またNGOの現場で働くときにはまずインターンからキャリアをスタートすることもあるだろうが、一度ある程度の収入を得てから無給のインターンに飛び込むのもかなり困難を伴う決断になる。
もちろん自分が目指す志に沿ってキャリアを選択しているんだから「周りは周り、自分は自分」と考えられればいいのだが、どうしても周りをきょろきょろ見てしまうのが人間の性ではないだろうか。
実際にかかる費用と機会費用の両方の「お金」問題について考える必要があるだろう。
4. 職務経験は本当に必要?
途上国の現場で働くポジションの求人を見ると職務経験〇年と書かれている。
もちろんセオリー通りに行けば職務経験を積んでから応募すべきだろう。
しかしながら、実は私は職務経験がないまま雇っていただいた。
インターンから始めるという方法がある。
私は修士号終了後、教育NGOのインターンとしてミャンマーのNGOに派遣された。
1年という中期のインターンであったが、このインターンの期間中、
現場に即した改善の提案や現地語の習得など自分ができる限りのアピールをした。
組織内の編成もあり、インターンの途中から職員として働くことになった。
インターンから必ず職員への道が開かれているわけではないので、運にもよるが、
経験がなくても、日本人スタッフとも現地スタッフとも良好なコミュニケーションが取れたり、伸びしろがあると感じてもらえれば、採用を検討してくれるかもしれない。
組織としては、全く知らない人と一から仕事をし始めるよりも、すでに知っている人を採用する方が安心感があるのだと思う。
さらに、私のNGO仲間の話と私の経験によると、現在国際協力のNGO業界は若手不足のように感じる。1970年~80年代に誕生した多くの日系NGOの黎明期のメンバーが定年を迎え新たな職員を迎える必要があるのだが、なかなか若手が集まらないらしい。
私の友人で大学時代に国際協力に興味があった人たちの現在の例を挙げると、まずはコンサルに就職して国連を目指す、ソーシャルビジネスをやっている企業に就職、自分で途上国で起業準備などがある。国際協力に携わる方法が多様化している一方で、NGOは国際協力人材の確保に苦戦しているのかもしれない。
そのため、組織や上司から良い印象を持ってもらえれば、採用の可能性はあるかもしれない。
5.大学卒業後協力隊に応募
手っ取り早く二年間の途上国の実務経験を得たいのであれば、学部終了後に協力隊で二年間途上国の現場に派遣されることを目指すことも手だ。
2年間の派遣を終えて帰国すると200万円程度が日本の口座に振り込まれているようだ。
この資金を元手に修士課程の準備もすることもできる。
(協力隊に関しての詳しい情報は他のブログを当たってほしい。)
一方で教師としての経験がないと、必ずしも教育分野に派遣されるとは限らないのと、
準備+2年間の期間が私にはやや長く感じたため、私は協力隊には応募しなかった。
まとめ
国際協力分野でどのように働きたいのか、修士号のタイミング、お金と、いくつか国際協力NGOの現場で働くために考えておくべき軸をご紹介した。
また職務経験が要件と言われる中インターンから採用につながるケースがあることもご紹介した。
絶対に新卒した方がいいと断言する人がいるが、絶対ということはなく、
NGOへの就職には様々なルートがあるので、情報収集やネットワーキングを怠らず、自分のキャリアの目的や条件に沿って納得のいく進路選択をしてほしい。